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研究内容

研究概要

これまでインターネットは1対1通信を中心としたシンプルな接続性を重視する設計思想の元に急速に普及してきました.近年では無線通信技術やモバイル環境の発展により,いつでもどこでもネットワークサービスを利用できる身近な社会インフラとなりつつあります.そのため,ユーザの利用形態や要求も多様化してきており,インターネットサービスは単なるデータ通信だけではなく,音楽や動画のストリーミング配信やオンラインゲーム,オンライントレードなども登場し,今後さらに新しいタイプのサービスが実現されることが期待されています.つまり,このように多様化した環境において,ユーザのニーズに沿った柔軟な通信を提供する高度なネットワーク環境の実現が求められています.そこで,私たちの研究室では新たなネットワーク環境やサービスの実現に向け,以下に示すようなネットワーク技術に関する研究に取り組んでいます.

主な研究区分

コンテンツ指向ネットワーク

人気度推測に基づく選択的キャッシング

フラッディングを用いた分散キャッシュ探索手法

データセンタネットワーク

公平性・効率性改善のための帯域割当

高機能中継ノードを用いたトラヒック制御技術

フロー情報を用いた適応型オンライン圧縮

近年,インターネットユーザの継続的な増加に伴い,画像や動画などの大容量データが頻繁にやりとりされるようになり,ネットワーク内を流れるトラヒックが急激に増加しています.過度なトラヒックは輻輳の発生を招き,パケットロスや遅延時間が増加し,ネットワークの性能を低下させてしまう恐れがあります.また,ネットワーク資源は有限であるため,今後も増大し続けるトラヒックに対応できない可能性があります.そこで本研究では,高機能中継ノードにおいて圧縮処理によりネットワーク内を流れるトラヒック量自体を削減し,ネットワークに対する負荷を軽減させることで通信品質を向上させる適応型オンライン圧縮手法に関する研究を行っています.この高機能中継ノードを導入することにより,状況に応じた効率の良いトラヒック圧縮が可能となり,ネットワーク資源の有効活用が期待できます.

ストリーミングサービスのための透過型キャッシング

近年,ネットワーク技術が進歩したことや,コンテンツのデジタル化が進んだ結果,高画質なコンテンツをインターネットを通じて配信できるようになりました.それに伴い,インターネットを介してコンテンツを配信するサービスが広く普及しており,特にコンテンツデータをダウンロードしながら再生することにより,高いリアルタイム性を持つストリーミング配信が注目されています.しかし,同時に多くのクライアントが再生要求をすると,ネットワーク容量を超えたデータが配信される場合があります.このような状況になると,輻輳が発生することでパケットがロスし,再生までの待ち時間が増加したり,コンテンツの再生品質が低下するなどの悪影響が生じてしまいます.そこで本研究室では,ネットワーク内のトラフィック量削減や負荷分散を目的とした,高機能中継ノードに関する研究を行っています.この高機能中継ノードを導入することにより,サーバの負荷やリンク負荷を減少でき,高品質なストリーミング配信の実現が期待できます.

トランスポート層プロトコル

誤り訂正技術を用いたトランスポートプロトコル

通信のグローバル化が急速に進行し,P2P,国際通信,衛星通信技術を利用して国境を超えた通信が頻繁に行われています.そのため,高遅延,広帯域な環境において大容量な情報交換が増加しています.インターネットで信頼性のある通信を行うためには従来よりネットワークの状況に応じた輻輳制御と再送制御を提供するTCP(Transmission Control Protocol)が広く利用されています.しかし,TCPでは国際通信のような特に高遅延な環境においては再送によって通信性能に悪影響を与えてしまう可能性があります.そこで,再送によらずパケットロスの回復を行う誤り訂正技術として前方誤り訂正(Forward Error Correction: FEC)を利用したプロトコルが研究開発されていますが,FECは一般的に転送レートが一定なUDPに対して適用されており,常に転送レートが変動するTCPへの適用は容易ではありません.そこで本研究室では,データ転送効率の向上を図るため,FEC技術を用いたTCPフロー制御に関する研究を行っています.

高速トランスポートプロトコル

近年,急激なブロードバンド化やマルチメディア化に伴い,ネットワーク回線が一度に送信することができる転送量(帯域)が年々増加してきています.一方,データ伝送に使われるトランスポートプロトコルとして,現在まで主にTCP(Transmission Control Protocol)が使用され続けています.しかし,TCPはこれほど増大したネットワーク帯域を想定しておらず,効率的に利用することはできません.そこで,その問題に対処するために様々な高速トランスポートプロトコル(高速TCP)が研究開発されてきていますが,従来のTCPと混在して利用すると,高速TCPが大きな利用帯域を獲得するため従来TCPの性能へ悪影響を与える不公平な状況が生じてしまいます.そこで本研究室では,このような状況下においても従来TCPが本来獲得できる帯域を残し,従来TCPが利用できない帯域を有効活用するための高速TCPについて研究を行っています.

広域無線ネットワーク

マルチホップ無線環境におけるルータ主導型トラヒック制御

無線LANの普及に伴い,インターネットへ無線アクセスする環境が整備されてきています.これまで無線アクセス網を拡大するためには,複数のアクセスポイント(AP)を配置し,そのAP間を有線接続する形態が用いられてきましたが,近年ではその設置・運用コストの観点からAP間も無線接続するマルチホップ無線ネットワークやメッシュ無線ネットワークが期待されています.しかし,このようなネットワークでは輻輳が隣接ノードに伝播することで,通信の安定性が低下することが明らかになっています.そこで本研究では,安定した通信を提供することを目的とし,特定のフローに偏ったパケット転送を抑制するトラヒック制御方式に関する研究を行っています.

セッション層アーキテクチャ

高度なネットワーク技術や多様化するインターネットサービスに対応できる通信環境を実現するために,従来のインターネットアーキテクチャが見直され始めています.そこで本研究では,従来のアプリケーション層からトランスポート層,ネットワーク層が密接に結びついた構造ではなく,セッション層におけるセッション管理を基本とする新しい通信形態のアーキテクチャを検討しています.

グループ通信のためのセッション内フロー集約

同じ目的をもったユーザ同士が1つのグループを形成し,1対多や多対多の形態で情報交換を行うグループ通信の需要が高まっています.しかし,既存の通信技術を用いてグループ通信を行うと,ネットワーク内に冗長なTCPフローが発生し,ネットワーク内のトラヒック量が増加するため,良好な通信性能を獲得することができません.そこで,従来エンド端末間で管理されていたTCPコネクションをネットワーク内の高機能中継ノードにおいて分割することにより,複数発生していた冗長なTCPフローを1本に集約し,通信効率の向上を図る機構に関して研究を行っています.

端末間セッションマイグレーション

ユーザが通信環境に適した機器を選択できることは快適なサービスの利用要求に対応するために必要不可欠です.しかし,通信の途中で端末を切り替えるとIPアドレスが変更されるため,既存のアーキテクチャでは確立されていたコネクションが終了してしまいます.そこで,新たに導入するセッション層においてセッションに参加している複数端末間のコネクションとアプリケーションの関係を含む情報を管理することで,通信端末間のコネクションを柔軟に扱うことを可能にするセッションマイグレーション機構に関して研究を行っています.